近年、医療現場でも電子カルテやタブレット、オンライン診療などが急速に普及しています。
また最近では、ChatGTPをはじめとする生成AIの進化も目まぐるしいです。
その中で「看護師にITスキルは必要なの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
実際に病棟で働いていると、毎日の記録業務や情報共有に追われ、パソコンやシステムに触れる時間は自然と増えているはずです。以前は紙カルテ中心だった現場も、いまやデジタル機器なしでは成り立たない状況になっています。
そんな時代に、ITスキルを「自分には関係ない」と切り離してしまうのはもったいない。むしろ、少しずつでもITに強くなることが、看護師としての働きやすさや将来のキャリアを大きく広げてくれるのです。
この記事では、看護師がITスキルを身に付けるべき3つの理由について、具体例を交えながら紹介していきます。

業務効率化と患者ケアの質向上
看護師の仕事は、患者さんのケアだけに留まりません。バイタルサインの記録、看護計画の入力、物品の管理、申し送りやカンファレンスなど、実に多岐にわたります。特に電子カルテの入力や記録業務は時間を取られやすく、「パソコンに向かってばかりで患者さんと話す時間が少ない」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。
ここでITスキルがあるかどうかが大きな差になります。
例えば、電子カルテのショートカットキーや効率的な入力方法を知っているだけで、数分から十数分の時短につながります。病棟全体で考えれば、その積み重ねはかなり大きな差になるはずです。
さらに、Excelやスプレッドシートを使いこなせると、シフト表の自動作成や物品の在庫管理が圧倒的に楽になります。
「表を作るのが苦手でいつも手作業」「在庫チェックに時間がかかる」という課題も、簡単な関数や条件付き書式を覚えるだけで解決できます。こうした小さな工夫の積み重ねが、業務全体の効率を押し上げるのです。
効率化のメリットは、単なる「楽になる」だけではありません。記録や事務作業に取られる時間を減らすことで、患者さんと向き合う時間を増やすことができます。
「患者さんの話をじっくり聞けた」「ケアの質を見直す余裕ができた」といった成果は、看護師自身のやりがいにも直結します。
つまり、ITスキルは業務の効率化を通じて、最終的に患者ケアの質を高める力を持っているのです。これが、現場で働く看護師にとって非常に大きな価値なのです。
キャリアの選択肢が広がる
「看護師=病棟勤務」というイメージが強いですが、ITスキルを持つことでキャリアの幅は大きく広がります。いま医療業界は「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」が加速しており、電子カルテのクラウド化、オンライン診療、在宅医療のICT活用など、デジタルを前提とした仕組みが急速に導入されています。こうした現場では、医療の専門性とITの知識を併せ持つ人材が求められているのです。
たとえば、以下のようなキャリアパスが考えられます。
- システム導入サポート 新しい電子カルテや看護記録システムを導入する際、現場スタッフの声をITベンダーに伝えたり、逆に新しいシステムを現場に浸透させたりする役割。IT担当者と現場の「通訳」として活躍できます。
- 看護情報管理・データ分析 患者データや業務データを整理・分析し、感染管理や褥瘡対策、業務改善に活かす役割。エクセルや統計ツール、場合によってはSQLやBIツールを使う場面もあり、臨床現場をより良くするための提案ができます。
- 教育・研修担当 ITに苦手意識を持つスタッフに、ツールの使い方や効率的な活用方法を教える役割。院内研修やマニュアル作成など、教育分野での活躍の場も広がります。
さらに、病院や施設の枠を越えてキャリアを築く可能性もあります。
たとえば、在宅医療や訪問看護の分野では、クラウド型の記録システムやオンライン会議ツールを使う機会が増えていますし、ヘルスケアIT企業に転職して「医療者視点を持つエンジニア」や「医療コンサルタント」として働く道もあります。
また、フリーランスや副業の選択肢も広がります。ITスキルがあれば、在宅でできる業務改善のアドバイザーや、健康相談×オンラインサービスといった新しい働き方も可能です。
看護師という資格だけでは得られなかった「時間や場所にとらわれない働き方」が、ITスキルを通じて現実味を帯びてきます。
つまり、ITスキルは単なる「便利な道具」ではなく、看護師のキャリアの可能性を何倍にも広げるパスポートなのです。
自己成長と市場価値の向上
看護師の国家資格はそれ自体が大きな強みですが、同じ資格を持つ人は全国に何十万人もいます。その中で自分の市場価値を高めるには、「+αのスキル」を持つことが重要です。ここで活きるのがITスキルです。
ITスキルは、どの職場でも通用する「ポータブルスキル」と呼ばれる力です。たとえば、ExcelやPowerPointを使ったデータ整理や資料作成のスキルは、病棟だけでなく教育や研究、行政、企業など幅広い場面で役立ちます。これは医療機関を離れても活かせるスキルであり、キャリアの安定性を高める要素になります。
また、ITスキルを学ぶプロセスそのものが、看護師の自己成長にもつながります。プログラミングやデータ分析に触れると、論理的思考や問題解決力が自然と鍛えられます。日常業務の中でも、「どうすれば効率化できるか」「データから何を読み取れるか」と考える視点が生まれ、現場での発言力やリーダーシップにも結びついていきます。
さらに、AIやIoTといった最新技術の発展に伴い、「看護師なのにITもできる」という強みは大きな差別化ポイントになります。たとえば、AIを活用した問診システムや遠隔モニタリングツールを導入する際に、看護師としての臨床経験とIT知識を掛け合わせて提案できる人材は非常に貴重です。こうした能力は病院内だけでなく、医療関連企業や教育機関からも高く評価されます。
市場価値が上がれば、転職やキャリアチェンジの際に有利になるのはもちろんのこと、現在の職場でも「頼られる人材」として評価されやすくなります。結果的に、給与や役職といった待遇面にも良い影響を与える可能性があります。
つまり、ITスキルの習得は単なる技術の獲得にとどまらず、自己成長のサイクルを加速させ、看護師としての市場価値を何倍にも高めることにつながるのです。
まとめ
看護師がITスキルを身に付けるべき理由は、大きく3つあります。
- 業務効率化と患者ケアの質向上
- キャリアの選択肢が広がる
- 自己成長と市場価値の向上
これらは決して遠い未来の話ではなく、すでに現場で起きている変化です。
最初はExcelやパソコンの基礎からで十分です。少しずつ学んでいくことで、働きやすさもキャリアの幅も大きく広がります。
ITスキルは、もはや一部の専門家だけのものではありません。
「看護師×IT」という二刀流の新しい強みを持つことで、あなた自身の可能性を広げ、次世代のヘルスケアを担う存在になれるはずです。
